テーブル上での裸眼複合現実感システムを実現する上で、空間に実像を結ぶ再帰透過光学系は効果的である。なかでも対称ミラー構造を用いた手法は、テーブル上から宙に浮く領域の広範囲で空中像を表示することが可能である。しかしこの手法は、テーブル面を見込む領域の一部で観察される空中像が暗くぼやけた映像になり、輝度や鮮明度が不連続になるという問題を含んでいた。これはミラー反射を介して空中像生成に使われる光学素子を見込む角が、推奨値より大きくなる範囲で発生する。そこで本研究ではシステム内のミラー配置を変えることで、光学素子を見込む角を推奨値に近づける手法を検討する。 国際学会 International Con
AR用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の普及が進み、HMDの利用シーンが拡大している。今後、屋外でもHMDを使った情報閲覧の機会が増加することを想定し、我々は歩行時のHMDでのテキスト表示の可読性について研究を進めている。HMDにテキストを表示する場合、画面の座標系でテキストを固定する方法と、外部環境の座標系でテキストを固定させる方法が考えられる。本発表では、トレッドミルで歩行しながら、これら二つの座標系でテキストを表示した際の可読性を比較した結果を報告する。 国際学会 International Conference with Peer Review Shogo Fukushima, T
HMDを装着してVRを体験する際には、同じ実空間にいる他者にはその体験が伝わりにくいため体験の共有とコミュニケーションが難しい。そこで、HMDにレーザープロジェクタを装着してVRプレイヤーの視野を実空間の壁面に投影することで、周囲の人の注視の方向が同期しかつ没入感のある体験を可能にすること提案する。その際の映像投影の工夫や周囲の人がバーチャル空間に介入する手法を提案し、その実装および応用例を示す。 論文 Transaction Paper Ikuo Kamei, Takefumi Hiraki, Shogo Fukushima, and Takeshi Naemura: “PILC Proje
実物体と混在して表示可能な空中像は、複合現実感システムの要素技術として有効である。空中像光学系の中でも、再帰透過光学素子 (RT plate) は 1) 光学系の手前に実像を結ぶ、2) 原理的には像が歪まない、3) 結像位置が制御しやすいという特徴を持った光学系であり、多くのシステムで用いられている。しかし、RT plate の構造に起因して空中像には不連続歪み、ボケ、格子の写り込み、反転などの画質劣化が生じる問題がある。これにより、画像などの見た目が損なわれたり、文字などの情報を表示した際に視認しにくくなったりする。本研究では、不連続歪みおよび格子の写り込み、反転を補正する手法として、RT
記憶に関する神経生理学や心理学の最新の研究成果により、人が新たな出来事や言語を記憶する際に、「情動(感情を含む)」や「運動」がその事象の五感覚情報を長期記憶として保持させることが明らかになりつつあります。本研究は、この情動や運動の記憶保持効果とVR・AR技術を統合し、人の記憶に効果的に介入する新たな語彙学習の潮流を創ることを目指します。 Research in cognitive and affective neuroscience has been revealing that moderate physiological or emotional arousal enhance lo
ブレインストーミングを用いたグループワークは,ビジネスや教育の現場で広く採用されている.しかし生産性向上に向けては,以下二点の課題が存在する.一つ目は,アイデア発散の際に他人の否定的な評価を気にして発言やアイデア創出が抑圧されてしまうことであり,二つ目は,アイデア収束の際に発散時の議論(同意度)が客観的な記録として残らないことである.筆者らはこれらの課題に向け,肯定意見のみの共有で承認欲求を満たし,客観的記録として残す事例としてFacebookのイイネボタンに着想を得た.アイデア発散段階のブレインストーミングにおいて,効果音ボタンを用いて肯定意見を共有することでアイデア増加を狙うほか,収束段階
When we snap strings playing with a CMOS camera, the strings seems to vibrate in a wobbly slow motion pattern. Because a CMOS sensor scans one line of video in sequence, fast moving objects are distorted during the scanning sequence. The morphing and distorting are called a rolling shutter effect, w
グループワークや会議などにおいて,議論や作業の結論だけでなく,その過程を詳細に記録し,効率的に振り返ることは重要である.本システムはグループワークや会議において全周映像の記録を行い,そこから生成されるダイジェスト映像を簡便な構成によって空間的に振り返ることを可能にする.本稿ではシステムを大学のグループワーク講義で実践利用した結果を報告する. 国内学会 Domestic Conference 梶原 善之, 福嶋 政期, 会田 大也, 苗村 健: “全周映像を用いたグループワーク振り返り支援システムRONGの基礎検討”, HCGシンポジウム2015論文集, pp. 301
映像に連動させてロボットの群れを制御することでタンジブルメディアとするテーブルトップシステムにおいて,映像との時間・空間的整合を保ちながら制御信号をロボット群に伝送することは重要である.本稿では,可視光通信プロジェクタを用いて,投影映像にピクセル単位で不可視ビット情報を埋め込み,テーブルトップディスプレイ上のロボット群がその情報を受信,解析することで,群ロボット制御を実現するシステムを提案し,その実現のための技術的検討を行う. 国際学会 International Conference with Peer Review Takefumi Hiraki, Issei Takahashi, Sho
記念撮影で自然な表情を撮影するのは難しい.本研究では被撮影者に自然な笑顔の表出を促すカメラを検討している.本稿では笑い声が笑顔や笑いを誘発する現象に着目し,シャッターを切る前に笑い声を再生することで自然な笑顔を撮影するカメラシステムを提案する.効果を検証するために,シャッター音・笑い声(青年)・笑い声(幼児)の3 条件で表情の変化を比較した.さらに笑い声呈示から表情表出までの時間差に着目しシャッターを切るタイミングを検討した. 国際学会 International Conference with Peer Review Ryohei Fushimi, Shogo Fukushima, and
自律神経や血流などの生理変化が情動や選考に影響することが知られている.本研究では,鍼灸のような自律神経に作用する触刺激をコンテンツに合わせて提示することで,コンテンツ鑑賞中の情動とコンテンツへの印象を効果的に高める鑑賞システムを製作することが目的である.本稿ではその前段階として,生理変化を誘発する触刺激として頸部への温熱刺激を,コンテンツとして音楽を利用し,頸部への温熱刺激が音楽鑑賞中の情動と楽曲への印象に与える影響について検討した. 国際学会 International Conference with Peer Review 福嶋 政期, 苗村 健: “頸部への温熱刺激が音楽鑑賞
Forming images by using a swarm of mobile robots has emerged as a new platform for computer entertainment. Each robot has colored lighting, and the swarm represents various abstract patterns by using the lighting and the locomotion. The aim of our research is to create a novel display field named
グループワークにPCを持ち込む事で視線が個人のPC画面に奪われ,会話が減る事が指摘されている.我々はこの課題を解決する為にグループ内でPCの作業状況を見せ合うシステム,“対面的画面共有”を提案し,大学のグループワーク講義に導入する事でコミュニケーションの変化を観察してきた.本論文はこの講義の二年目として昨年度の講義を改善し,その講義設計と実施結果について報告するものである.昨年度との違いは3つある.1つ目は対面的画面共有システムの機能であるWeb閲覧画面に加えてWeb閲覧履歴もグループ内で共有するシステム,“RTB(Round-Table Browsing)”をグループワークへ導入したことであ
温覚刺激を皮膚に提示しながらその近傍に触刺激を提示すると、触刺激に温覚が重畳されるという現象が知られている.温度感覚の空間分解能の低さが一因であるという意味では,近傍点同士の温度感覚が穴埋めされる温度錯覚(thermal referral)と類似の現象であると考えられる.一方で本現象においてどのような触刺激がこの現象に寄与するかは未だに解明されていない。そこで本研究では、これらの現象に関与する機械受容器を特定することを目的とする。我々は人の前腕部にペルチェ素子を貼付し、その近傍に振動刺激を提示した。振動刺激に重畳される温度感覚と振動刺激周波数の関係を調べることで本現象の機序を調べた。 We f
近年、タッチパネルにおける指先への凹凸感の提示方法として、タッチパネルそのものが振動し触覚提示する手法や、ピンアレイを用いて物理的にパネルを変形させる手法が用いられている。しかし、これらの手法では提示面に振動子やピンなどの大掛かりな実装が必要であり、提示面が限定されるなどの問題点も存在する。そこで本研究は、手部に装着するウェアラブルデバイスにより、凹凸を知覚させることを目指す。デバイスから骨格筋へ電気刺激することで、指先との接触面に水平方向の力を生み出し、実際の凹凸面を指でなぞった際に生じる筋収縮とそれに伴う筋・皮膚感覚を生起させる。これを実現することで、小型デバイスによる高いリアリティの凹凸
人は好みの異性を目にした時、心拍の上昇や胸が締め付けられたような感覚を生起することがある。これらは一般的に「胸キュン」と呼ばれている現象で、相手に対して好意を抱いたときに生じる生理的興奮である。また、「胸キュン」が夫婦やカップルの間で互いの良さを再確認するきっかけになることもあり、新鮮味のなくなった関係を再び良好なものにするために非常に重要な役割を果たすと考えられる。そこで本研究では「胸キュン」を人工的に発生させることによって、人の好意を生起させることを目的とした。我々はユーザの胸部にスピーカーを装着し、そのスピーカーから心拍と同期した振動を提示する。これにより、ユーザはスピーカーを自分の身体
椅子やジャケットなどに振動子を組み込み、映画などの視聴覚コンテンツに則して触覚を提示する装置が提案されている。これらは触刺激によってコンテンツのリアリティを高める事で高い没入感や感動を喚起させている。これに対して我々は、視聴覚コンテンツによって喚起される感情や生理変化を直接促すことで高い没入感や感動を作り出すことを提案する。本稿では生理変化の一種として、人が感動した際や興奮した際に生じる立毛現象に着目する。体毛は帯電した絶縁体を接近させると立毛する。我々は身体周辺を絶縁体で覆い、その絶縁体に高電圧を印加する事で静電気力によって全身の体毛を立毛させる。特に人の立毛現象は交感神経によって支配されて
タッチパネル型の携帯情報端末が普及している。タッチパネルは画面の上で操作するUI(User Interface)である。これに対して我々は、画面ではなく、タッチパネルを把持した掌の上で操作する体験が得られるUIを提案する。これを実現するためにタッチパネルの背面に電気触覚ディスプレイを貼付し、タッチパネルへの指先の押下を電気触覚として背面の掌に提示すると共に、画面の映像も触刺激として掌に提示する。掌の上で操作することで、従来視覚的にしか認識できなかったグラフィックスの位置や感触や動きやリアクションなどを掌の触覚として認識出来る。そのため、より正確にタッチパネルを操作できるようになると考える。 W
PCなどのポインタを操作するポインティングデバイスは,力制御による入力方式のポインティングスティック型と,位置制御による入力方式のタッチパッド型に大別される.前者は小面積での入力が可能であるが,曲線を描くような細かい操作が困難である.一方で,後者は直感的であり細かい操作が可能であるが,前者に比べ設置面積が大きくなってしまう.つまり,従来の入力インタフェースでは,入力環境の小面積化と直感性の両立は困難であった. 本研究では小面積かつ直観的操作が可能な入力インタフェースの実現のために,当研究室が発見した電気刺激を用いた滑り錯覚という現象を利用したポインティングデバイスを提案する.発見された滑り錯覚
高臨場感技術の飛躍的な進歩によって録音された音楽や音声をより忠実に再現できるようになった。しかし再現された音響のみでさらなる音響体験を生み出すのは困難であり、別のアプローチが必要と考えられる。今回我々は音響を聴いたときに想起する「情動」に着目し、音響体験によって誘発される情動体験を強調することによって音響体験の質を高められると考えた。そこで音響に耳への皮膚感覚を付加することでヒトの音響体験をより魅力的にする手法を提案する。 Most people often experience music with accompanying emotion in every day of their liv
現在、バラエティ番組やコメディ番組等の映像コンテンツには観客の笑い声(いわゆるラフトラック)が人為的に付加されている。ラフトラックには、視聴者の共感作用に働きかけ笑いの閾値を下げる効果があるとされている。ただし、不自然なラフトラックや視聴者のおかしみに反してラフトラックを再生すると視聴者に違和感を与えてしまう。 我々は視聴者の笑いに同期させてラフトラックを再生させる装置、笑い増幅器を製作した。本装置は、視聴者の周囲に人形を配置し、人形から笑い声を再生する。人形を介して観客の笑い声や存在感を実体化する事で視聴者の共感作用をさらに増幅できると考える。 また、視聴者の笑いを検出するために剣状突起部の
近年、コンピュータ中の情報を机上の実物体で現し、タンジブルメディアとする机上インターフェースが多く提案されている。しかし、従来の机上インターフェースの多くは、机上物体駆動のために机の下に大掛かりな装置を必要とし、また高速での駆動は難しかった。我々は磁性体の机自体を水平振動させ、物体側に取り付けた電磁石の電流を振動に同期させることで、物体を任意方向に駆動するシンプルな群ロボットシステムを提案する。 To overcome the limitation of visual information display, some works have proposed to use desktop “t